『増えるものたちの進化生物学 (ちくまプリマー新書 423)』
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ISBN:4480684468
生命と非生命をわけるもの、それは「増える」ことである。増える能力は生命を悩める存在へと変えてしまった――生命の起源と未来を見つめる知的問答の書。
【目次】
第1章 なぜ生きているのか
…そもそもの始まりと進化の原理
第2章 なぜ死にたくないのか
…命がとにかく大事な私たち
第3章 なぜ他人が気になるのか
…やさしくなければ生きていけない
第4章 なぜ性があるのか
…子孫を残したいという「時代遅れ」の本能
第5章 何のために生まれてきたのか
…人間として生きることの価値とは
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読書メモsansho.icon
本書の問い
「なぜ生きているのか?」この問いに科学的に答えを出すことを本書で試みる
問いのブレイクダウン「私や皆さんがここに生きているのはなぜか?」
私たちの親が子を残すことを望んだから、そしてそれは祖先となる生物のすべてが子を残そうとし、それに成功したから→「増える能力」の誕生
増えるものと増えないものの違い
岩石とミジンコの例
岩石は増えない。生き残りやすい丈夫な性質を持っていたとしても、その性質が次世代に受け継がれることはない
ミジンコは増える。どんどん性質がその環境に適したものに変化する=進化
進化という現象のためには「増える」ことと、「子孫に形質が遺伝する」ことが必要
「増える」という現象には、時間が経つにつれてどんどん増える能力が向上していく特徴がある→増えやすさに貢献する能力がどんどん進化
増え方の戦略
とにかく速く増えるが、その分体が小さく単純になり死にやすくなる=多産多死
細菌などの「原核生物」
ゆっくり増える代わりに、その分死ににくくすることで子孫を残す=少産少死
酵母やゾウリムシ、ミドリムシなどの「真核生物」
植物などの「光合成」をする生物
少産少死の戦略について
ゆっくり増える→成長に時間がかかる→成長に多くのコストがかかる→できるだけ死なないようにするほうが子孫を残せる→自分や子孫の命を大切にする
確実に子孫を増やすためには子どもを死なせないようにすること→子育てをすることが有利になる→愛情が生まれる
なぜ私たちは悩むのか
健康上の問題(病気、体が思うように動かない、痛みがある)、生活上の問題(収入が少ない、休みが少ない)、生殖上の問題(相手がいない、子どもができない)など…これらの悩みは少産少死で死なないように進化してきた結果である
人間は他の生物より大きなコストをかけて育てられてきたため、自分の命が大事
さらに悩みに拍車をかけるのが高い知能。将来のことも心配してしまう性質のため、人間は長生きすることができた。
ただこれらの性質は生き残り、増え続けるためには役立つが、楽しく生きるためには重荷になることも多い。
他人との関わりでも私たちは悩む。これは長生きできるようになり、高い認識能力を獲得するようになると、他人と協力できるようになることが生存に有利になる。そして協力することで生き延びた人間がますます協力的になっていく。
異性との問題でも人間は悩む。性の役割は血縁関係のない個体間の遺伝子の混ぜ合わせにより、集団の多様性が保たれ、ウイルスなどの病原体との進化的競争に有利に働く。ただ現代では医療技術などの進歩により、性の役割自体が不要になりつつある。
私たちは何を目指して生きていけばよいのか
生物は末永く幸せになるようにはできていない。幸福感の実態は煎じ詰めると「脳内の神経伝達物質の分泌と特定のニューロンの発火」であり、この発火は持続しない。
人間を含むすべての生命は物理現象であり、「〇〇のために生きている」というわかりやすい使命や目的はない。
それでは、何を目指して生きていけばよいのか
対処法1 人間に対する過度な期待をやめる
人間が生きるのに使命や目的が欲しいというのは、人間に過度に期待しすぎている。
対処法2 目的はなくても価値はある
今問題になっているのは「人生には目的はなく、だったら生きている意味や価値がないのではないか」ということ。しかし、これは早計であり、私たちの人生には希少価値がある。
希少価値を大切にしていくために具体的に何をすればいいか
現状の社会水準の維持。そして才能を持った人たちが得意分野で才能を発揮できるようにサポートをすること。
「ミーム」(人間の脳に広がる考え方やアイデア)を維持し、発展させていくこと。